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富裕層のための不動産投資

3.減価償却狙いの節税目的の不動産投資、本当に有利なのか?

・3-1.耐用年数切れの築古アパートを利用した節税アイデアとは

「地方のボロボロアパートを持つことで節税になる」
そのような話を聞いたことのある方もいらっしゃるかもしれません。特に企業のオーナー社長は節税できるという話が出回り、こぞってそのようなアパートを買った社長もいます。

それは一体どのような方法なのでしょうか? キーワードは「減価償却」にあります。
減価償却とは一定程度、自らの意思で経費の額や計上のタイミングをコントロールして税金のマネジメントに応用できる方法です。減価償却を活用するうえで、収益物件は非常に便利です。
地方のボロボロ木造アパートは、法定耐用年数を超えているので、4年で減価償却できます。
木造アパートは法定耐用年数が22年なので、建築から22年以上経過し、法定耐用年数を超えたものを購入することがカギです。

土地5000万円、建物5000万円で合計1億円の木造アパートを購入したとして、4年で減価償却するので、4年間は1年あたり1250万円分が償却できることになります。

・3-2.「築古での減価償却で節税」はできない

こう聞くと税金を減らせて夢のような制度のように感じる方も多いのですが、減価償却とは節税ではありません。あくまでも税金の支払いを先送りしているに過ぎないものです。
不動産投資における減価償却とは、今年の税金が安くなる分、売却時の税金が高くなる性質を持っています。
買ってから売るまでの全体で見れば、減価償却による損益は相殺され、その有無が正味利益に与える影響はほとんどありません(税率が一定かつ売買価格に変動がない場合)。

近々大きな出費があり、税金の支払いをあとにしたいというような場合は効果もあるでしょうが、税金を先送りするためだけにボロボロな建物を購入することは、得策とは言えません。

法定耐用年数を過ぎているような建物は、銀行も融資に積極的ではありません。また、用が済んだ物件は速やかに売却したいところですが、そんなうまみのないボロ物件を欲しい人は、せいぜい同じように減価償却をしたい人くらいのものです。
減価償却を目的としても、物件を持った結果空室が埋まらずとなったならば、損を抱えるばかりです。しかもできるのは「節税」ではなく「納税の先送り」。

「税金」を「せっかくの稼ぎをむしり取られるもの」とでも考え、節税に血眼になる人も多いですが、「節税」ばかりに意識が向かった結果、そもそもの稼ぎを減らしたり、そのせいで損失を生んだりしている人が結構います。
節税だけを目的にするのは、賢明とは言えません。

・3-3.減価償却は得か損か、シミュレーション ケース1

減価償却が大したメリットにならないことを、様々なパターンで通常通りに使った場合と使わなかった場合で比べる図を、玉川陽介氏が計算しています。
物件を5年目に売却すると仮定した場合の税引き前利益の推移は以下です。

減価償却の有無による利益の総額の違い

玉川陽介『不動産投資「収益計算」のすべて』(技術評論社)に掲載の図を元に、編集部が作成

結論を言えば、保有期間中と売却時の税率が同じであれば、減価償却の有無にかかわらず税引き前利益の総額は同じとなります。
減価償却で目先の税金は少なくなっても、結局あとで払うだけなのです。収益に大した影響はありません。

・3-4.ケース2:購入時と売却時で条件が変わる場合

なお、先ほどのケースは「保有期間中と売却時の税率が変わらない」「不動産価格に変化がない」という条件下でした。
その条件が変わる場合はどうでしょうか。
法人で所有している場合、保有期間中のインカムゲイン税率は25%程度になることが多く、売却時の利益が大きいため、税引き前利益800万円を超過し、税率は37%程度になると考えられます。物件の保有中に減価償却を多く使うと、売却時の利益が大きくなりすぎて、高額課税の対象となる金額が増えてしまっています。

売却損が発生する場合、売却時に税金の支払いがなくなるので、保有期間中に減価償却を多く使うことで利益を生み出すことができます。
ただし、売却損が出ている時点で損しています。減価償却による利益など、穴埋めにもなりません。

・3-5.ケース3:売却時の税率が低い場合

条件はケース1と同じで、保有期間のみ7年(個人で長期保有)として、7年目以降の売却はキャピタルゲイン税率が20.315%に低下します。
この場合、保有期間中に減価償却を使うことで利益を少なくし、売却時に利益を繰り延べる形にすれば、その税率差の分だけ税引き後利益は増加します。

売却時の税率が低い場合は減価償却が利益に

玉川陽介『不動産投資「収益計算」のすべて』(技術評論社)に掲載の図を元に、編集部が作成

この場合は「減価償却で節税できる」と言います。

・3-6.ケース4:売却時の税率が高い場合

法人で所有している場合、保有期間中のインカムゲイン税率は25%程度になることが多く、売却時の利益が大きいため、税引き前利益800万円を超過し、税率は37%程度になると考えられます。
保有期間中に減価償却を多く使い、建物簿価を下げると売却時の利益が大きくなり、37%の課税対象となる金額が増えてしまいます。
そのため、保有期間中に多額の減価償却を使って簿価を下げると、トータルで見ると不利になることもあります。

売却時の税率が低い場合は減価償却が利益に

玉川陽介『不動産投資「収益計算」のすべて』(技術評論社)に掲載の図を元に、編集部が作成

・3-7.ケース5:「ボロボロ木造アパートで減価償却」をシミュレーション

中古の木造アパートは耐用年数が短く、10年以内に建物の償却を終えることも可能なため、購入時に建物価格の按分を多く取れるならば、当初はほとんど税金を支払わずに済み、キャッシュフローが多く出て儲かっているかのように思えます。地方のほうが建物比率に応じて償却額が大きくなるのでなおのことです。

しかし、減価償却を多くすると売却時のキャピタルゲイン課税が高額になりますから、先送りにするためだけの減価償却を利用した投資はやめたほうがよいでしょう。

・3-8.築古物件の修繕費は予測できるのか?

地方のボロ物件に対し、はじき出される高利回りを魅力と感じる投資家もいます。購入価格が安く抑えられるため不動産投資の初期費用回収が簡単で、回収が済めばあとはどんどん儲けになっていく。そんな絵が見えます。
果たしてそううまくいくのでしょうか。

ボロ物件は家賃が平均よりも低いわけですが、そのような物件には何かしら安い家に住む事情のある人が入居することになり、近隣住民とのトラブルや、家賃の滞納といったことも起こり得ます。
家賃を下げるのが嫌だとなれば、リフォームするなり金額を下げずに済むための工夫が必要ですが、そうなると安くない費用が発生します。

ボロ物件ほど、費用のかかる大規模な工事が必要だったりします。修理よりも新築のほうが安く済むことも多いものです。
大規模工事を行った結果、工事費用が物件そのものの購入価格以上の金額になることも珍しくありません。
入居者は現れるかもしれませんが、それならば最初からリフォーム済みの物件を買っていたほうが、トータルの費用は抑えられる、そんなこともあり得るのです。

不動産投資は長いスパンで考える必要のあるものであり、不動産を売却するまで利益は確定しません。
その間にそのときそのときは儲かっているように見えても、トータルで見ると儲かっていない、そんしていることもよくあります。

きちんと長い目で見て「ちゃんと儲かるようになっているか」を客観的に見られるようにしましょう。

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