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税金はもっと減らせる! 富裕層・高額所得者のための対策

10.確実に税金を減らせる控除枠。面倒くさがらずに使い倒そう

 最後に、控除について説明します。冒頭で「収入-経費=所得」とお伝えしましたが、正確には「収入-必要経費-控除=所得」です。
所得は売上から経費だけでなく、控除も引いたものから割り出されるので、使える控除はできるだけ使ったほうがよいからです。
 金額は決して大きくありませんが、適用されるものは受けておいて損はありません。

10-1.住宅ローン控除で払った税金を取り戻す

住宅ローン控除とは、年末の住宅ローン残高に応じて、一定額が所得税から控除される制度です。会社勤めの人などは、その年の所得税があらかじめ勤務先から納税されているので、納めすぎたことになる分を確定申告で還付してもらうことができます。
控除期間は10年間で、2019年6月までに家を購入して入居した人は、各年最大40万円、10年間で最大400万円が所得税から戻ってくることになります。
最大控除額が適用されるには、ローン残高が10年間で4000万円を超えていて、年間の所得税と住民税で40万円を超えている必要があります。
※所得税から控除しきれない額は住民税からも控除されます。その際所得税の課税総所得金額等の額の7%、または13万6500円のうち小さいほうの額が上限となります。
住宅ローン控除で戻る税額は、さまざまな条件により異なります。
(1)購入・建築する住宅の性能
(2)住宅ローンの年末残高
(3)所得税額・住民税額

実際に戻ってくるのは(1)~(3)のうちの、一番少ない金額です。

10-2.結構幅広く適用される医療費控除

医療費控除も実は範囲がかなり幅広いほか、家族の分もまとめて控除できる点が魅力的です。
家族を含み年間10万円以上、もしくは所得の5%以上の医療費を支払っていれば、若干の税金が戻ってきます。
控除の対象となる主な医療費は以下の通りです。

1 医師、歯科医師による診療、治療の代金(健康診断の費用や医師等に対する謝礼金などは原則として含まれない)
2 治療薬の購入代金(風邪をひいた場合の風邪薬などの購入代金は医療費となるが、ビタミン剤などの医薬品の購入代金は認められない)
3 病院、診療所、介護老人保健施設、助産所などへの入院、通院のための交通費
4 あん摩マッサージ指圧師、はり師、きゅう師、柔道整復師による施術の対価(疲れを癒したり、体調を整えるといった治療に直接関係のないものは含まれない)
5 保健師、看護師、准看護師または特に依頼した人による療養上の世話の対価(家政婦に病人の付添いを頼んだ場合、療養上の世話に対する対価に含まれるが、所定の料金以外の心付けなどは除かれる)
6 助産師による分べんの介助の対価
7 介護保険制度を利用して介護福祉士等に受けたサービスに支払った金額のうち、2分の1相当額か一定の在宅サービスを受けたことで自己負担額に相当する金額
8 禁煙治療、一定の条件をクリアした温泉療法の費用など

※医療費控除に認められる温泉療法として、①医師が温泉療法を治療になると認め、証明書を発行した場合②厚生労働省で認められた温泉療養施設を利用した場合である必要があり、厚生労働省で認められた温泉療養施設は、「温泉利用型健康増進施設連絡会」で確認できます。

このほかに、EDの治療も控除の対象になるとされています。

医療費控除の計算式は
その年に支払った医療費(保険金等で戻ってきた金額を除く)-10万円もしくは所得金額の5%のいずれか少ないほう=医療費控除額(最高200万円)

10-3.保険は優秀な控除アイテム。損金でうまく利益圧縮

生命保険料控除の種類は以下の3種類にわかれます。なお生命保険料控除は平成22年に改正され、現在は新制度と旧制度の両方による運用がされています。それぞれの種類と控除額について簡単に説明します。

10-3-1.新旧の保険とその種類

・一般生命保険料
一般的な生命保険契約、民間の生命保険会社との生命保険契約、農業協同組合などの生命共済、などが該当します。
・介護医療保険料
医療費に対して保険金が支払われる契約、疫病や身体の障害などに対して保険金が支払われる簡易保険契約が対象。ただし、傷害保険や5年未満の契約、貯蓄系の契約は控除の対象となりません。

・個人年金保険料
個人年金保険が対象で、年金の受取人が、保険料の支払者もしくは配偶者となっているなど、いくつか条件があります。

新制度を適用させる場合、一般生命保険料・介護医療保険料・個人年金保険料、それぞれの適用限度額は最大で4万円となります(所得税の場合)。住民税の場合はそれぞれ2万8000円と、所得税と住民税では控除額が異なります。

旧制度の場合は所得税の最大適用額が、一般生命保険料・個人年金保険料それぞれ5万円ずつです。また住民税の場合はそれぞれの最大適用額が3万5000円となっています。

10-3-2.保険も法人がやはり有利

個人の生命保険料控除は年間で最大12万円までしか認められていません。一方で法人には、このような制限がありません。
保険料が年間数百万円単位でも、その一部、半額、場合によっては全額を経費に計上できる法人専用の生命保険もあります。
「会社が予想よりも利益を出してしまったので、役員を急ぎ保険に加入させた」
このような節税策を打っている会社もたくさん存在します。
保険の控除を最大に活用するうえでも、ここでも法人がやはり有利になるのです。

●10-4.富裕層のふるさと納税は災害寄付か高額を自治体の事業に

最後に、これも富裕層の脱税策のようにいわれていますが、そんなにものすごい効果があるわけではありません。ただし控除が発生しますので、やらない手はありません。
ふるさと納税とは、自分が応援したい自治体に寄附をすると、寄付金から2000円を引いた額が寄附した人の所得税と個人の住民税から控除されるものです。
現在、多くの自治体がふるさと納税のお礼の品を用意していて、様々なものがもらえるとして人気が高まっています。
たとえば給与収入で2500万円を超える人は、独身もしくは共働きであれば、84万9000円が控除の対象となります。
富裕層・高額所得者ほど寄附できる金額が多いため、その分返礼品も多くもらえることになり、富裕層優遇だ、不公平だという声もありますが、寄附額に応じて山ほど返礼品をもらっても、とても処理しきれません。
また、最近はだいぶ簡略化されるようになりましたが、ふるさと納税の手続きはそれなりに時間を要するため、効率を考えると劇的な節税策とは言えません。
たとえば、5万円の寄附をするとしても、80万円以上寄附できるとなると、その手続きを20回近く行わなければなりません。1回あたりの手続きが10分で済むとしても、200分。時間の無駄と言わざるを得ないでしょう。
寄附が済んだならば、今度は大量に送られてくる返礼品の処理に追われることになり、とられる時間はたくさん発生します。

手間を考えるとあまり得策ではありませんが、控除されるのでふるさと納税自体は行っておいたほうが得策です。効率を考えると一番よいのは、災害のあった地域、被災地などに一括で寄附することです。
「ふるさと納税で寄附」はだいぶ定着してきました。いくつものふるさと納税を行うサイトを通じて、簡単に寄附できるようになっています。

受け取る領収書が多いほど、そのあとの手続きは煩雑になりますから、できるだけ高額で、お礼の品を受け取らない、もしくは少ない寄附をするのが、確定申告時の手間を省く上でも賢明です。

まとめ

 さまざまな節税策を紹介してきました。それほど労力をかけずにすぐ行えるもの、ある程度準備や時間が必要なもの、「こんなこともOKなの!?」と思われるものなど、多々あったことと思います。
 いちばん税金を支払うことになる人はどんな人か、納税額が確定し「今年こんなに税金高いの!?」とびっくりし、あわてて納税資金の確保に走る人です。
逆に、もっとも支払う額を減らせているのは、「今度の納税額はこのくらいになりそう」と早目に把握し、行動している人です。
「この支払いは来年に回そう」とか「投資を行って減価償却しよう」などなど、早目に動いているからこそできることはたくさんあります。早目に動ければ動けるほど楽に行うことが可能です。
大切なのは先を見据えて前倒しで準備をすることです。

そしてもう1つ、とても重要なのが行動にも、購入や投資にもすべて「根拠を持つ」ことです。「なんとなく買いました」「いるような気がして支払いました」といった、人に納得してもらえる説明ができない購入は、税務調査で否認される可能性が高くなります。せっかくの節税策も、認められなければ意味がありません。
税務は常識的にできています。「常識で考えてOK」「社会通念上問題ない」に収まっていること、そして最後は交渉力、これらが富裕層・高額所得者の所得税節税に必須です。

参考文献・資料

『お金持ちの教科書』加谷珪一 CCCメディアハウス
『隠れ増税』山田順 青春出版社
『税金を払う奴はバカ!』大村大二郎 ビジネス社
『経費になる領収書ならない領収書がよくわかる本』村田栄樹 ソーテック社
『ホントは教えたくない資産運用のカラクリ2016 投資と税金編』安間伸 東洋経済新報社
『大富豪が実践しているお金の哲学』冨田和成 クロスメディアパブリッシング
『社長、御社の税金は半分にできる!』久保憂希也 あさ出版
『社長、税務調査の損得は税理士で決まる!』税務調査対策研究会 あさ出版
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