富裕層バイブル

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税金はもっと減らせる! 富裕層・高額所得者のための対策

6.タックスヘイブン?!知らずに「脱税」してしまうと人生終了!

「世界で最も成功した社会主義国家」
日本について語った、旧ソ連のゴルバチョフ元大統領の言葉とされていますが、それを裏付ける記録はありません。
誰が言ったかわかりませんが、今も残る言葉であることが、それを多くの人が実感しているからと言えるでしょう。

日本の所得税は、1974年には最高税率が75%でした。住民税も最高税率が18%で、住民税と合わせた最高税率93%が、所得8000万円以上に対し課せられていました。
これはもう完全に国が「儲けすぎは罰。稼ぎすぎた分は税金として没収する」と言っていたことになります。社会主義国そのものです。
今考えても巨額の税金ですが、この頃は高度経済成長期、その後のバブル期とまさにいい時代だったため、社会全体としてもまだ許容できる率だったわけですが、その後の景気の減速とともに最高税率は下がり、1999年には37%まで下がります。もっとも高かったときの半分です。
住民税も下がり、1999年には13%となりました。この年の最高税率は50%です。

その後所得税率はまた上昇し、平成27年分以降の所得税から適用される最高税率は45%となりました。住民税10%と合わせると55%です。
1970年頃とは時代が変わっており、以前のような稼ぐ者に対する締め付けではなく、税収確保のための富裕層・高額所得者への高額課税がまた進んでいます。

6-1.海外に資産を移動? バレてます

これほどまでの重税国家日本。日本国に課税対象とされる資産を持っていても、どんどん税金として取られていくだけ。そういう発想になるのはもっともです。
そこで「海外の、日本政府の目が届かないところに隠しておく」考えが出てくるわけですが、世間一般の人が持つ「お金持ちは海外に資産を隠している」は、実際のところどこまで可能なのでしょうか?
「香港の銀行に口座を開設し、そこに資金を移す」
「スイスのプライベートバンクに預ける」
こういったものがよく言われていますが、実際にできるのでしょうか?

結論を言うと、そういった「日本政府の監視の目を潜り抜ける」ことは、現在はかなり困難です。まずそもそもとして、どこの国も課税の対象となる富裕層・高額所得者の財産にはかなり目を光らせる傾向になっており、OECD諸国は結束し、自国民が持つ海外の資産や所得の捕捉と課税を強めてきています。
日本も同様で、2014年7月に東京、大阪、名古屋の国税局に「重点管理富裕層プロジェクトチーム」(通称富裕層PT)が設置されました。国際課税に精通した国際担当のこのPTは今後も福岡など主要都市で増えていく予定です。

政府が「統括国税実査官」を中心に、富裕層をターゲットに国際的なマネーの動きを監視するためのチームです。
政府は香港やシンガポールなど税金が安い、資産を隠すメリットの多そうな場所にも専任の調査官を常駐させ、監視態勢を強めています。

2013年末より、「国外財産報告制度」が始まりました。年末に5000万円超の国外財産を有する居住者は、所轄の税務署への申告が義務付けられています。報告を怠った場合、1年以下の懲役または50万円以下の罰金です。

さらに、銀行などの金融機関は、100万円以上の国外送金等があった場合、税務署に報告する義務があることから、それを受けた税務署から送金を行った人物に対し、「国外送金等に関するお尋ね」が送付されます。
この「お尋ね」では、確定申告の有無や具体的な取引内容が確認されます。また、送金明細や取引内容のわかる書類の写しの添付が要求されることもあります。
以前は200万円を超える国外送金に対し行われていましたが、現在は100万円超に引き下げられました。
有価証券の国外への移管はあまりチェックされていませんでしたが、これについても2014年度の税制改正で、国境を越えて有価証券の証券口座間移管を行った場合、「国外証券移管等調書」を提出することが義務付けられました。

そして2015年、ついに出国税(国外転出時課税制度)が導入されました。国外に財産を持って移住する場合に課税されます。
対象資産は1億円以上で、その含み益に所得税及び復興特別所得税が課されることになりました。1億円以上の資産を保有している人が日本に居住していても、外国に居住している子どもや孫などへの贈与や相続などによる資産の移転があった場合も、その含み益に対して同様の課税がされることとなったのです。
なお、この出国税は最近検討されている「海外旅行等で出国することに対する課税」とは異なるので注意が必要です。

6-2.マイナンバーで一律管理されている

こうも細かく、日本国民の資産は監視されています。新たに始まったマイナンバー制度も、その目的は個人の財産の把握です。マイナンバーの導入に対して、政府は盛んに便利であるとメリットを強調していましたが、好意的な人はほとんどいませんでした。本当の目的は個人の財産の把握だからです。

マイナンバーにより、政府は一気に個人の資産を管理しやすくなりました。国が営業許可を出している金融機関等に顧客のマイナンバー提出を義務付ければ完了です。
マイナンバーに反対し、マイナンバーカードを受け取らないとしていた人たちも、様々な不利益が生じることから日々の生活に影響が出るようになり、ほとんどは受け入れざるを得ませんでした。もはや財産を国に知られずに隠すことは不可能です。
 

6-3.パーマネントトラベラーなど絶対無理

課税逃れをする方法として「パーマネントトラベラー」という生き方もあります。これは元々、高額の税金に苦しんでいた欧米の富裕層が実施していたもので、大まかに言えば、滞在日数がその国の税法上「居住者」になる前に転々と別の国に引っ越すというものです。どこの国にも定住せず、一生、旅行者という身分であり続けるというライフスタイルのことです。

パーマネントトラベラーの概念は、1964年にハリー・D・シュルツ氏が発表しました。セカンドパスポートを持ち、資産を自国外の安全な場所に置くというものです。1989年にW.G.ヒル氏が実践し『PT』という著書にまとめ、ここでほぼ現在の理論が固まったと言われています。

日本におけるパーマネントトラベラー研究の第一人者、木村昭二氏は「どこの国でも、消費税、固定資産税、ホテル税、印紙税などの間接税がありますから、いくらタックスヘイブン国に居住してもこれらの税金は払わざるをえません。税金をまったく払わないということは難しいと思いますが、日本に居住するよりは納税額をかなり少なくすることは十分可能でしょう。
国籍が日本国の場合は、日本の非居住者になれば所得税の部分でかなりの節税が可能です。さらに居住国をタックスヘイブン国にすればさらにかなりの節税は可能です」と語っていました。

夢のありそうな話にも思えますが、木村氏が語っていたのは、今から約10年前であることを考えれば、現代においてはこの発言がすでに破たんしていることが容易にわかるでしょう。
まず、所得税を払わない海外在住を目指すにしても、先述の通り日本人が海外に資産を移すことに関して非常に厳しくなっています。日本から移す時点でもう記録されています。
また、普通に考えて、常に移動している必要があるパーマネントトラベラーを実現できるくらいの収入があり、高額納税が予想される人物が、日本の税務署に目をつけられていないわけがありません。

そもそも、日本の富裕層締め付けがこれだけ厳しくなっているのには、アメリカの方針が大きな影響を与えています。
アメリカは国民の所得が海外に流れるのを嫌い、国民の監視を強めています。
アメリカから出ていった富が日本やほかの国に流れては困る、そのために、関係する国々と連携を取り、「お金持ちのお金は今どこにあるか」を見張るネットワークを強固に構築しているのです。
「税金のためだけに国を移動する」ような生き方はまさに法律の抜け道のようなもので、どんどんふさがれています。

PTまでいかなくとも、海外に移住するのはよほど資産を運用するだけで暮らしていける人でなければ、いくらインターネットで世界とつながれる時代になったとはいえ、海外でいきなり暮らすのは現実的ではありません。しかも出国には税金がかかるようになる可能性もあります。
法律の抜け道を突くあまり、無理やり身を細くするのは本末転倒なのです。

6-4.タックスヘイブン法人は、ただの違法手段

先ほど「タックスヘイブン」という言葉が出てきました。これも富裕層の資産隠しの方法かのように言われるので説明します。
「タックスヘイブン(租税回避地)」は税金(所得税、法人税)を免除、または軽減している地域のことで、オフショアとも呼ばれます。

世界に50以上あるとされ、ルクセンブルグ、バミューダ諸島、ケイマン諸島、マン島、バージン諸島などが有名です。
それらの小さな国や島は収入を得る手段が限られているため、金融特区のような税制優遇措置を提供することで資金を集めています。
世界の富裕層が所有する金融資産のうち約30~40%がオフショアにあるとされ、また取引されています。
タックスヘイブンでは金融資産に対して譲渡益課税や利子・配当課税がかからず、相続税・贈与税がなく、国内(地域外)で得た所得に対して所得税・法人税が課税されません。これが最大のメリットです。そしてここを間違えてはいけないのですが、タックスヘイブン自体は決して違法ではありません。

しかし、本来日本国内で事業が行われていれば課税されるべき資金が、タックスヘイブンに移されることによって課税できない事態を避けるため、日本では「タックスヘイブン対策税制」が定められています。
これは不正な租税回避行為を防止するためのものであり、タックスヘイブンの法人を所有していても、それが実質的に日本の居住者・法人によるものだった場合、タックスヘイブンの法人の所得も国内での所得とみなして課税する制度です。

「タックスヘイブンに資産を隠す」「タックスヘイブンに会社をつくって資産防衛」
そんなことがよくいわれていますが、それを日本で行うのはただの脱税です。
富裕層・高額所得者は税務署に目をつけられていて、かつ「見せしめ」の意味でも、「富裕層の○○氏が脱税で逮捕」といった報道が積極的に行われます。
そんな報道がされようものなら、対外的な信用失墜などの損失は大きく、もう人生終了の危機とも言えるかもしれません。
節税は知恵を絞り、また知識や専門家の力などを借りて行うべきですが、あくまでも合法の範囲で行うべきであり、グレーなものは戦っても、クロなことはやらないことをお勧めします。

6-5.パナマ文書は「資産隠しなど無理」を証明した

数年前に世界を揺るがすニュースとなった「パナマ文書」も、タックスヘイブンで行われていたことでした。パナマの法律事務所がタックスヘイブンに会社を設立して資産移転や資産隠しを行う手助けをしていたとして、ICIJ(国際調査報道ジャーナリスト連合)が公開した膨大なファイル、それがパナマ文書です。

パナマの大手法律事務所モサック・フォンセカのアドバイスによって設立された、数々のタックスヘイブンのペーパーカンパニーが存在し、その数は20万社以上にも上りました。資料は1150万件、データ量は2.6テラバイトにも及ぶ膨大なもので、ロシアのプーチン大統領の親しい知人3人、中国の習近平国家主席、英国のキャメロン元首相ら世界各国の首脳クラスの名前が出たために、世界中がその内容に驚愕したのです。

日本に関係する企業と個人は約400あり、ソフトバンクの子会社、伊藤忠商事、丸紅をはじめ、東京電力など幅広い業種の大企業の名前が出ています。
ただし、日本が関係していたものはほとんど合法の範囲内で、日本企業は日常的にタックスヘイブンを使った何らかの商取引を広く行っているということが明らかになっています。

楽天、セコム、UCCホールディングスなどの代表者の名前も出ていますが、ほとんどは認められる税金対策の範囲内と考えられています。
パナマ文書に載っていた人物で、アメリカ関係は詐欺などの疑いで刑事告訴された人物が36人も入っていたとされ、犯罪の匂いもするパナマ文書ですが、結局のところ、日本の資産が海外流出することに対し厳しい目を光らせている国税庁から逃れられないことを、証明したに過ぎなかったのです。

6-6.もう「100万ずつ持って100回海外に行く」しかない!?

これまでお伝えしてきたように、富裕層・高額所得者の資産の動きに対する監視の目は鋭くなる一方です。富裕層・高額所得者の間では「もう100万円を持って100回海外に行くしかない」という会話がなされています。
100万円までならば出入国時に記入の必要がないため、誰にも知られず海外に運ぶことが可能です。100回行えば1億円をこっそり海外移転することができます。
ただしこれも、「国外財産報告制度」が始まっています。年末に5000万円超の国外財産を有する居住者は、所轄の税務署への申告が義務付けられていますから、合法の範囲で行うならば、100万円を持って運ぶのは50回未満にしておくか、家族で分けてそれぞれが5000万円を超えないようにするしかありません。

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