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富裕層のための相続税節税
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富裕層のための相続税節税術

4.自社株の評価額を下げる方法

中小企業のオーナー社長なら考えなければならないことが「自社株対策」です。
一律に判断、このような税率が適用と言えない部分がたくさんあり、このあと詳しくお伝えしていきますが「余計な対策をした結果巨額の相続税が発生」という事態も起こり得ますので、「うちの会社の場合はどうなのか?」をしっかり考え、効果的な手は打ち、余計なことはしないように気をつけていただきたいと思います。

4-1.「業績好調な中小企業」は必須の対策

「相続税増税」という言葉が独り歩きしている感じがありますが、全財産を現金で持っているような場合、そこまでものすごい対策が必要なわけではありません。
特に配偶者への相続には配偶者の税額の軽減が最大1億6000万円まで認められるので、配偶者のどちらかに対する相続であれば、相続税が発生しないこともあり得ます。

心配なのは「企業オーナーの富裕層」企業経営者やその親族の相続です。一代で財をなした創業経営者は巨万の富を築くことになり、その富は親族へと相続されていきます。
富の多くは創業した会社の株式、すなわち「自社株」や、不動産、金融資産などにも及ぶことがほとんどです。
規模が大きく、またその種類も多岐にわたるため、対策もしっかり行う必要があり、逆に失敗すればそれだけで巨額の相続税が発生する可能性もあります。

株式公開していない中小企業の株の価格は、わかりにくいところがあります。一般的に、中小企業の株はあまり価値がないとされ、相続税が発生しないこともよくあります。

高い価値が発生するのは大きく成長した優良企業、業績好調な会社の株です。
そのような会社の株はかなりの価格となり、いくら創業社長とはいえ支払えないレベルの巨額な相続税になるかもしれません。

自社株の難しいところは、高いにもかかわらずすんなり売却できないところです。上場企業であれば、株を100といった少数の単位で売り出しても買いたい人が現れますが、中小企業の場合、その程度の株を持っても意味がありません。
持つならば議決権を持つために50%以上を保有することでメリットが生まれます。
そして50%以上の自社株を売却するとは、会社の経営権を手放すことです。
手放してしまったならば、その後子どもなどに事業を承継することもできません。

こうして有効な手も打てないうちに何年も経過し、相続が間近に迫った、もしくは相続が発生し、数億円から数十億円に及ぶ自社株の相続税評価に愕然、かといってその頃にはもう大した手も打てず、仕方なく会社をM&Aで手放す……そのようなことにもなりかねません。

4-2.持ち株会社に売る適切な価格は?

自社株対策を銀行に相談すると、多くの銀行が提案してくるのが「持ち株会社方式」です。
オーナー経営者の長男などの子どもたちに「持ち株会社」というペーパーカンパニーを作らせて、そこで株式をすべて買い取らせる形です。
持ち株会社は自社株を買い取る程の資金を持ちあわせていませんので、銀行が資金を融資し、自社株を時価で買い取ります。
持ち株会社を設立することのメリットとして、息子に自社株の所有権が移転することで、ほかの相続人との余計な争いが避けられます。
次に、自社株を売却した創業社長の手元には自社株の売却代金となる現預金が入ります。自社株対策をしっかり行うような経営者は、不動産や金融資産なども多々保有しているのが普通で、自社株対策をしても相続税の支払いを免れないことがほとんどです。
そしてそれらの財産は換金性が低く、いざ相続が発生した際に相続税の支払いには不向きなので、現金を大量に保有できるという点からも、自社株の売却は効果があります。

このとき問題になるのは「いくらで売るのがよいか?」です。第三者に売るのであれば、公の場での売買になるので、相場より高ければ売れず、相場より安ければもっと高い値段で買いたいところが現れてと競争が発生し、ある程度適正な価格に落ち着くものです。

親から子への完全にクローズドな売買はそうはいきません。双方の合意さえあれば、金額がいくらでも売買が可能になります。できるだけ安く売れば、相続税の対象となる現金を少なくして、本来ならばもっと価値のある株を息子に安く受け継ぐことも可能でしょう。

しかしそこに、落とし穴があります。
「株をできるだけ安く息子に譲って相続税対策」そのような手口は誰もが考えるため、税務署も目を光らせています。後日「自社株の販売価格は適切だったのか?」と税務調査が入る可能性が高く、その金額の根拠についてしっかり説明できないと、追徴課税の対象になるかもしれません。

では「適切な価格」はどのようにして決定すればよいのでしょうか。「相続税評価額」は売買価格として適切ではありません。この相続税評価額は「相続税を計算するためのの価格なので、売買価格としては不適格です。
法人税、所得税の通達で定められた計算式で求めます。
この計算式は、「相続税評価額に3点の修正を加えて算出する」というものです。3点とは「類似業種比準価額」「純資産価額」「評価額」です。

言葉で表すのは簡単ですが、この「3点の修正」が絡むと非常に複雑になります。
果たしてどうなるか? ものすごく簡単に説明をすると「それぞれの基準に則って計算すると、実際の評価額との間に大きな差が生まれてしまう」さらにいえば「何もしない時よりも巨額の相続税を課されることもある」ということです。

法人税・所得税評価額と相続税評価額

金井義家『相続対策で消える富裕層、生き残る富裕層』に掲載の図をもとに、編集部が作成

相続税評価額で類似業種比準価額が10億円、純資産価額が100億円の企業があるとします。一定規模以上の会社であれば、類似業種比準価額は相続税評価額となるため、この会社の相続税評価額は10億円です。

しかし、法人税・所得税評価額では①類似業種比準価額が7億円、②純資産価額が123億円、法人税・所得税評価額では③純資産価額を最低でも50%加味する必要があるため、評価額は65億円となります。何もしない場合の6.5倍にもなってしまいました。

自社株に対して何もせず、10億円のままであれば最高税率55億円が適用されるとしても、相続税額は5.5億円です。
持ち株会社方式にしたところ、評価額は65億円となり、売買はこの金額でということになります。
加えて、売買に伴い譲渡所得税20%(住民税を含む)の12億3500万円(自社株の取得は譲渡収入の5%と仮定する)が発生し、52億6500万円の現金が残り、この金額が相続税の課税対象となると、最高税率55%が適用されて、相続税は28億9575円、何もしない場合に比べて5倍以上になってしまいました。

誤解のないよう触れておきますと、持ち株会社方式がダメだと言いたいわけではありません。
持ち株会社にすると、何もしないよりも高い税金を払うようになるケースもある、ということを認識していただきたいということです。
しっかり計画的に、その場しのぎではない手を打つ必要があります。

・投資、支給で純資産価額を下げる
なぜこのように大きく差が開いてしまったのか? もっとも大きな理由は、純資産価額の多さにありました。
対策としては、純資産価額を下げることが挙げられます。具体的には以下の内容が効果的です。

①土地に投資する
それにより時価よりも安い評価額にし、貸家建付地の評価を利用して純資産を少なくします。
※課税時期前3年以内に取得した土地及び家屋は通常の取引価額によって評価します。

②建物等に投資する
建物やゴルフ会員権など、時価よりも評価額が低くなる資産に投資し、さらに貸家にすることでより評価減することができます。

③役員退職金の支給
役員に退職金を支給し、まとまった金額を一気に支払うことで純資産を少なくします。純資産価額10億円の会社が1億円役員退職金を支給すれば、純資産価額は9億円となります。
役員に退職しても関連会社に出向させるなどの方法はいろいろあるため、退職金の支給タイミングはある程度コントロールすることも可能です。

ほかにも、収益部門を分社化するなどにより、評価する会社の配当金額、利益金額、純資産価額を下げることができます。

また、景気が悪いと全体的に評価額が下がりますから、そのタイミングで贈与や譲渡するのも節税対策として有効です。業績が悪いときや上場株式が低迷しているなど全体的に不景気なときです。景気が悪いときは類似業種比準価額も下がるので、自社株対策をするうえではいい時期と言えます。

4-3.適切な事業承継が、自社株の評価減につながる

企業オーナーの相続税対策は往々にしてスムーズにいきません。その大きな理由は、単なる相続税対策に限らず「事業承継」の面があることです。
事業承継は、一代で財を成した創業社長の非常に大きな課題です。すべてその社長がやってきたからこそ今の形になっているわけで、そう簡単に後継者に引き継げるものではありません。
また、創業社長にしても、自分が引退したあとのことを考えるのはいい気持ちがしないもの。ついつい決定を後回しにし、また思い切って引くことができない結果、効果的な事業承継ができないことが本当に多いのです。

引退する、といったものの会長に収まって実のところは変わらず決定を下している、会長からも離れたものの、相談役として居座り後継者の決定に口をはさむ。そんなケースが多々あります。それでは従業員も、誰の言うことを聞けばよいのかわからなくなってしまいます。

会社を一代で大きくしてきた功績は、称賛されるべきものです。ただし会社経営と、事業承継は完全に別物であり、まったく異なる取り組みが求められるものであるということを、理解していただければと思います。

また、自社株対策も含めた事業承継が順調な会社は、総じて業績も良いものです。事業承継とは、言葉を選ばず言えば売上に直接関係しない業務であり、それに時間や労力を費やせば費やすほど、売上を伸ばすための労力を減らしてしまうことになります。

日頃の忙しさや、またあまり考えたくないことでもあるので、ついつい後回しにされがちですが、どこかでしっかり時間を取り、手を打つことが、会社がのその後の存続、繁栄を考えるうえでも大切なのです。

4-4.「残り時間」と「効果的な相続対策」は反比例する

相続税対策、ひいては事業承継は、できるだけ早めに行うことが効果的です。相続が間近に迫りあわてて行う対策と、何年もかけてじっくり行ってきた準備では、できることがまったく異なります。
毎年時間をかけて行っていくこと、景気の波を見ながら、不景気のタイミングに行いたいことなどなど、行えるべきことは多岐にわたります。
また、財産を引き継ぐ家族との話し合いも、早い段階からしっかり行えるのが理想的です。

配偶者への相続は1億6000万円までの控除があるため、相続税に関してそう心配しなくてよい家庭も多いと思います。問題はそのあとの、代替わりの際の相続です。配偶者の控除が適用されないため、控除額が大幅に減っており、巨額の相続税が課される可能性も高くなります。

配偶者に対する相続が始まる前に、代替わりを見越した相続対策を行えることが理想です。次の代に引き継ぐことを考えれば、配偶者への相続の段階からできることはたくさんあります。

また、家族仲が良好か、不仲かもとても重要です。良好であればしっかりと話し合いをし、あらかじめ取り決めておけることもたくさんありますが、不仲で顔を合わせることもない、となると、できることは限られてしまうほか、行う相続税対策が、すべて逆効果になってしまうこともあります。

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