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アービトラージ投資は、これまで説明してきた王道やスタンダードな投資法からは少し異なります。
イメージのしづらい部分もあるかもしれません。
一方で「アービトラージこそ宝の山」と言う投資家もおり、うまく行えればこちらも大きく儲けられる可能性を秘めています。
アービトラージ投資は日本語で「裁定取引」といいます。裁定取引は、「同一の価値を持つ商品の一時的な価格差(歪み)が生じた際に、割高なほうを売り、割安なほうを買い、その後、両者の価格差が縮小した時点でそれぞれの反対売買を行うことで利益を獲得しようとする取引のこと。機関投資家などが、リスクを低くしながら利ざやを稼ぐ際に利用する手法です。株価指数等の現物価格と先物価格を利用した取引などが代表的です」(SMBC日興証券のホームページより)
説明を受けてもなかなかわかりにくいところですので、厳密には異なりますがものすごく卑近な例でたとえれば「せどり」です。
ブックオフで売られている、1冊500円の古くて汚い本。しかしそれが、実は有名作家の初版本だったりすると、数万円で売れることもよくあります。
ブックオフの評価基準では「価値の低い汚い本」ですから500円の価値しかなくても、初版本を多く集める古書店ならば数万円の価値を認めてくれる。500円で仕入れて数万円で売って利ざやを得る、これがアービトラージです。
今「せどり」でたとえたように、方法自体は株の取引以外にもいろいろな取引の場で用いられている方法です。
株式投資の世界では、どのようなときがアービトラージのチャンスか? 大きな変化の起こるとき、市場がその変化の価値を理解できていないときです。
もしあなたが株を持っている会社が破綻したと報道されたらば、心穏やかではないでしょう。
「ひどい損を被った。もうこれ以上損はしたくない。取り返せるものは一刻も早く、少しでもいいから」と考え、一刻も早く売りにかかりたいのではないでしょうか。
ある破綻した会社の株が、本当は10万円の価値があり、破産申請などのプロセスを経ればきちんと10万円は戻ってくるものだとしても、投資家はそれを待てる心理状態ではなくなっています。
その投資家が株を購入したときの価格が4万円だったとして、別の投資家が「5万円で買いますがいかがですか?」と言えば、株の保有者は「買ったときの金額は確保できるなら、こんなありがたい話はない。今すぐ売る!」となることがよくあります。
5万円で株を買い取った投資家は、やがて訪れる10万円になるときを待って、売るだけです。
M&A、企業分割、倒産、リストラなどが発生した際に、アービトラージの余地が生まれます。どれも株価を大きく下げるきっかけになるからです。
アービトラージ成功の可否は、リスクをきちんと取れるか、価値の減少は一時的なもので、必ず盛り返すと確信を持てるような情報を収集すること、状況を把握することができるかにかかっています。
「この会社は倒産し株価を大きく下げた。だが必ず盛り返す」と読んでその会社の株を大量に購入した結果、そのまま株が紙くずになってしまっては失敗です。
下がった株価が常に盛り返せるとは限りませんから、そこにはリスクが発生します。また見極めも必要になります。
また、当事者になってもあわてず、冷静に対処することが大切です。アービトラージ投資の大御所、個人パートナーシップの投資会社、ゴサム・キャピタル社の創設者、ジョエル・グリーンブラットは「M&A、企業分割、倒産、リストラは宝の山」と言っています。
冷静に状況を把握し、対応できれば、彼の言うように宝の山にできるかもしれないのです。
グリーンブラットがアービトラージで成功した例を1つ紹介します。
最近は日本にも増えてきたマリオットホテル。1980年代にマリオット・コーポレーションは数多くのホテルを建設し、積極的に拡大していました。その展開戦略は自社はホテルを所有せず、別の人が所有するホテルを経営し経営報酬を受け取る形でした。
ホテルを建設してそれを購入してもらい、経営契約を結んで「マリオットグループ」としてブランドを立てて経営していくスタイルが成功していたのです。
しかし、1990年代初め頃から状況が変わり、ホテルを建設するも買い手がつかない、さらにホテルを建設する際借り入れた何十億ドルもの負債に苦しめられる事態に陥っていました。
当時のマリオットのCFO、スティーブン・ボーレンバックは救済方法を思いつきました。
かつてカジノ事業で失敗し苦境に陥っていたドナルド・トランプ現アメリカ大統領の危機を救ったこともある彼の考えは、売れ残ったホテルの資産のすべてと成長率の低いホテル設営事業をホスト・マリオットという会社に残し、好調で実質的に負債を持たないホテル経営事業を分離して、マリオット・インターナショナルにするというものでした。
もっと簡単に言ってしまえば、優良なホテル経営会社と、数十億ドルの負債と売却不能な不動産を集約した「ゴミ捨て場」とでも言える別の会社をつくるということです。
普通に考えて「ゴミ捨て場」ホスト・マリオットの株に何の魅力があるでしょうか? 買いたい人などいるように思えません。まだ儲かる部分があるから持っていた株から、儲かっている部分を切り離すと言われたら、株主ならば速攻で売りにかかりたいでしょう。
実はそこにチャンスがありました。切り離すとはいえ、好調なマリオット・インターナショナルはホスト・マリオットに対し6億ドルのクレジットライン(貸出最高限度額)があり(要はマリオット・コーポレーションはホストに6億ドル貸す)、マリオット・コーポレーション株を25%所有するマリオット一族はマリオット・インターナショナルとホストの両方に25%の持ち分を継続することになっていました。これはオープンな情報でしたが、「マリオットの不採算部門が切り捨てられる」インパクトを前に、この点に注目できていた投資家はほとんどいなかったのです。そこにチャンスがありました。
・まともな機関投資家のほとんどはホスト株を早急に売る結果、ホストの株価は期待通り割安になる
・マリオットの一族など関係者も、持ち株がありホストを完全に切り捨てるわけではない
・何らかの理由でホストが最初の金額よりも魅力があるとわかったとき、投資家の利益は何倍にもなる
これらの条件がそろった結果、ホストの株は分割後4カ月もたたないうちに3倍になりました。グリーンブラットは多くの投資家が一斉に手放した株を安値で買った結果、大きく儲けることができたのです。