富裕層バイブル

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税金はもっと減らせる! 富裕層・高額所得者のための対策

3.本当に国税OBは使えるのか? 国とクライアント、どっちの味方?

納める税金を少なくするためには、税理士の協力が欠かせません。
「税金の計算なんて、誰がやっても同じ仕事では?」と思われるかもしれませんが、そんなことはありません。むしろ、税理士によって導き出される成果は大きく変わるのです。
クライアントの味方になってくれる税理士を見つけましょう。

3-1.納税額は税理士次第で大きく変わる

日本は「申告納税制度」を導入しています。税金に関しては「性善説」で、「納税者自らが税法を正しく理解し、その税法に従って正しい申告と納税をする」ことで成り立っています。
とはいえ、納税者が正しく税法を理解することは困難な部分も多々あるため、税法に関しては税理士という専門家がおり、「この部分は税理士が行うこと」と法律で定められているものがたくさんあります。
どのくらいの税金を納めるかは、税金の専門家である税理士に依る部分がかなり大きくなっています。
税金の計算ですから、どの税理士が行っても同じ結果になる、同じ結果にならなければおかしい、そう思えますが、そうとは限りません。税理士次第で、納税額が大きく変わるのはよくあることです。

どうしてそのようなことが起こるのか? 先述の通り、「経費と確実に認められるのは5%。残りの95%はグレー」なので、扱う人により解釈が分かれる部分が多々あるのです。

そして、税理士も納税者のことを考えて提案をしてくれる人や、杓子定規な対応をする人など、いろいろいます。
具体的には「この内容だと税務署がどう判断するかわかりません。ただし経費と認められないと言われても、こちらの考えをしっかり伝えて納得してもらえるようにします」と、税務署と「戦う」税理士もいれば「この内容は税務署ににらまれるのでやめておきましょう」と、慎重に仕事をし、交渉を行ったりすることに対し消極的なタイプもいます。

税理士は国税庁から免許を与えられており、国にしてみれば税理士に対し免許はく奪などの処分を下す権利があるので、税理士が国の意向を窺うのは当然かもしれませんが、顧問料などを支払っているのはクライアントである会社や事業主なわけですから、クライアントの味方であってほしいものです。

ただし、税理士の「そこまで頼むなら報酬はもっと高くないと」という言い分も一理あります。
「税理士は安いのが一番」という考えもありますが、支払った費用の分だけ付加価値のある仕事をしてくれる人もいます。
数十万、数百万円追加で支払うことで、数千万円の節税が可能になるならば、安いものです。

3-2.その税理士の顧客にほかの富裕層・高額所得者はいるか?

「税理士は人工知能にとって代わられる仕事の最たるもの」という話があります。単なる税金の計算をするだけであれば、機械が行ったほうが間違いなく速く、確実だからです。
確かに税理士の業務が計算だけならば、機械が行えば充分かもしれません。ですが顧問先企業と話し合いをし、今後のビジョンや財務状況等を踏まえて、適切な対応を行っていく、それは人間である税理士だからこそ行える仕事です。

人間である税理士に頼む仕事だからこそ、その人の「属性」について確認しておきたいところです。
その税理士は、富裕層・高額所得者でしょうか? 残念ながら、税理士のほとんどはお金の専門家ではあるものの、決して富裕層・高額所得者ではないことがほとんどです。その結果、富裕層・高額所得者の求める形の提案ができないことが少なくないのです。
たとえば、相続でまとまった額のお金を手にし、資産を5000万円ほど持つ定年が近い人の老後の資産運用方法について。相談を受けた税理士のほとんどが、生活のためにといってその金額を取り崩しながら運用することをアドバイスします。
取り崩しをすると、運用に使える元手が少なくなってしまい、それにより得られるリターンも小さくなりますから、元手を小さくすることは、富裕層・高額所得者の行う資産運用方法としては不適切です。
ですが大きな資産の運用経験のない税理士は、元手の少ない人の運用方法をアドバイスしてしまうのです。

「定年まではどんな仕事でもよいので続けて、その5000万円には一切手をつけないこと。その後年金をもらえるようになったら年金を生活収入の柱に変えて、5000万円はそのまま運用していく」
それが富裕層・高額所得者に税理士が行うべきアドバイスです。
税理士は、できれば本人が富裕層であることが一番ですが、そうでなくてもいかに富裕層・高額所得者の顧問を抱えているかなどが重要です。そのようなシチュエーションを経験しているからこそ、富裕層・高額所得者へのアドバイスも的を射たものになっていくからです。

3-3.その税理士は、税務調査慣れしているか?

申告納税制度を適用している日本ですが、バレないならごまかそうと思う人がいるのが世の常です。
また、悪意はなくても漏れがあったりなどで、払われるべき税金が払われていないこともあります。
そのような税に対する不公平感をなくすために行われるのが税務調査です。
「経費と確実に認められるのは5%。残りの95%はグレー」の、グレーを白黒はっきりさせるのが税務調査の役割であり、それまで考え、行ってきた数々の税金対策も、税務調査で認められれば有効となり、税務調査で否認されれば無効であると確定します。
税務調査は、多くの経費を認めてもらい支払う税金を減らしたい側と、少しでも多く否認し税金の額を多くしたい調査官とのやりとりの場です。

それだけ重要な場であるにもかかわらず、税理士はどのように対応したらよいかを知らないことがほとんどです。
税務調査対応は、税理士の試験で問われることもありません。
そのため、過去の経験から対応している税理士が大半を占めています。そしてそのやり方は、我流であることも多いのです。
「国税庁の役人が調査に来る」ことに必要以上に委縮し、時に国税調査官の無理な要求が通ったりといったこともあります。それは税理士が、税務調査について理解していないことで起こります。
税務調査対応経験が豊富で、かつ正しい知識を持っている税理士に対応してもらう必要があります。

3-4.税務調査に強い税理士かどうかを見抜く質問

「税理士は税務調査についてどこまで理解しているか?」
それを知るために、以下の質問が効果的です。税理士に聞いてみて、明確に答えられないようであれば、税務調査に強いとは言えません。対応に失敗し多くの税金を払うことになるかもしれません。

3-4-1.税務調査とは何かがわかる12の質問

1.税務調査を断ることはできますか?
2.税務調査と犯罪捜査はどこがどう違いますか?
3.忙しいので税務調査を先延ばしにしたいのですが、可能ですか?
4.税務調査は録音しておくべきでしょうか?
5.調査官にパソコンを触られたくないのですが大丈夫でしょうか?
6.会社の税務調査なのに個人の通帳を見せなければなりませんか?
7.無予告調査にはどう対応すればいいですか?
8.反面調査に行かせないことはできますか?
9.税務署に抗議する場合はどうすればいいですか?
10.否認指摘にどうしても納得できない場合はどうすればいいですか?
11.重加算税はどのような要件ですか?
12.事務運営指針をご存知ですか?

(久保憂希也『社長、税務調査の損得は税理士で決まる!』(あさ出版)の内容を一部変更)

3-4-2.税務調査とは何か 回答と解説

それぞれについて解説します。
1.税務調査を断ることはできますか?
→税務調査を断ることはできません。税務調査を受けない、調査官の質問に答えなかったり、嘘の回答をしたり、偽の帳簿などを提示した場合、1年以下の懲役または50万円以下の罰金が科されます。

2.税務調査と犯罪捜査はどこがどう違いますか?
→税務調査は犯罪捜査ではない旨は法人税法にも明記されています。捜査のように厳しく追及したり、高圧的な態度で臨んでくる調査官もいるため、感情的にならないように注意しましょう。調査官も人間なので、ムッとするような対応をされると相手も感情的になり、税務調査が長引いたり、追徴税額が増えてしまったりすることもあります。

3.忙しいので税務調査を先延ばしにしたいのですが、可能ですか?
→税務調査は受けなければならないものではありますが、犯罪捜査ではなく、扱いはあくまでも「任意」とされており、「調査の結果何も問題はなかった」となることも多いので、その意味では何でも税務署の都合に合わせる必要はありません。
ものすごく多忙な時期である、長期出張の予定があるなどで受けられない理由があるのであれば、その理由を伝えて調査自体を1~2カ月先にしてもらうことは可能です。

4.税務調査は録音しておくべきでしょうか?
→税務調査で調査官の言うことがコロコロ変わることは、よくあります。「否認しない」と言ったものを後日「否認する」と言い出したり、大した根拠もなく否認すると言うこともよくあるほか、高圧的な調査官が「言うことを聞いてもらわないと、追徴税額はもっと大きくなりますよ」「これから取引先まで行ってきましょうか? 取引先は、御社が脱税していると思うかもしれませんね」といった脅し文句を使ってくることもあります。
脅迫じみた発言は法律違反なので、国税庁に連絡すればその調査官は何かしら罰せられる可能性は十分にありますが、そのような発言があったと立証するのは非常に難しいため、必要なのは発言の記録です。そのために録音は欠かせません。ICレコーダーで録っておくとよいでしょう。

ちなみに、ICレコーダーで録音することは違法行為ではありませんが、録音されてプラスなことは1つもない調査官に、間違いなく録音はしないよう言われますから、調査官に見えないところに忍ばせておく必要があります。

5.調査官にパソコンを触られたくないのですが大丈夫でしょうか?
→調査官に「社長や会社のパソコンを触らせてほしい」と言われ、喜んでという人はいないでしょう。だからといって「プライベートな情報なども入っているので見せたくない」などと答えてしまえば、「会社の経費で買っているものでプライベートな利用もしているのならば、その経費を否認します」と言われてしまいます。
提示を求められたものはそのデータを調査官に画面で表示して見せる、もしくはプリントアウトして提示すればよいでしょう。調査官は会社や個人の許可なく会社の物品を触ることはできないため、「必要なものは出しますから言ってください」と対応すればそれで構いません。

6.会社の税務調査なのに個人の通帳を見せなければなりませんか?
→調査官が社長個人の通帳を見たいと言うのは、社長の個人預金に会社の売上や裏リベートなどが入金されていないかを確認したいからですが、あくまでも会社の税務調査である以上、社長個人の通帳を見せる必要はありません。「その必要はないと思いますが」と拒否すればよいだけです。

7.無予告調査にはどう対応すればいいですか?
→通常の税務調査は事前に調査を行いたい旨連絡があり、社長や税理士と日程調査を行うものですが、事前連絡なしにいきなり調査官が会社や自宅に来る場合があり、「無予告調査」「現況調査」と呼ばれています。
現金商売でその場に経営者もいる飲食店や商売などでよく行われます。

国税庁によると、税務調査全体のうち、法人は約1割、個人事業主は2割が無予告調査とされます。
何も知らない社員や家族が中に通してしまい、そのまま税務調査が始まってしまうことがあり、そうなると受け入れ準備もできていない段階で、よくわからないうちに調査官の言い分が通っていってしまうような状態になるので大変不利です。
どのように対応するのがよいか、まずは調査官を社内、自宅内に入れず、外で待ってもらうことです。待たせることは特に問題ありません。

調査官を待たせた状態で、急ぎ顧問の税理士に連絡し、税理士が電話で調査官と話し「今日は先約があるので、調査は別の日でお願いしたい」旨を交渉してもらいます。
調査官もいきなり来るくらいなので、なんとか調査をしようとしてくるでしょうが、「いつだったら受けられます」というように正確な日時を決めて、その日は帰ってもらうようにし、決まったその日に向けて準備をしていくのがよいでしょう。
ちゃんと調査を受ける意思がある旨を伝えることが、早く帰ってもらいやすいポイントです。

8.反面調査に行かせないことはできますか?
→税務調査に入った会社の取引先や銀行に、調査官が取引内容の確認に行く「反面調査」。問題は何もないとしても、税務署の職員がやってきたとなると、脱税していると思われ信用関係に傷がつくことはよくあり、最悪の場合は取引を打ち切られたりすることも珍しくありません。
デメリットの非常に大きいものであり、反面調査をチラつかせて交渉を有利に進めようとする調査官もいます。
反面調査に関しては、「取引先等の反面調査を実施しなければ適正な課税標準を把握することができないと認められる場合に実施する」(平成12年7月個人課税事務提要、平成13年7月法人課税事務提要)といった内部規則がありますが、知らない現場の担当者も多いため、調査官が意味もなく反面調査に行くと言い出した場合は「国税の内部規則を守らないのですか?」と伝え、不要な反面調査は回避することが得策です。

9.税務署に抗議する場合はどうすればいいですか?
→税務調査が続くと、その内容が不当に感じられたり、調査官の言っていることが無理難題に感じられることは多々出てきます。ですがその場で調査官と口論しても意味がありません。調査官に対する不満は、その上司である統括官に伝える必要があるからです。
また、現場の調査官には意思決定権がないため、税務調査の内容についての抗議も、上司である統括官に話す必要があります。

加えて、抗議や反論は書面で行うことが記録を残す、論点の整理をするうえでも効果的です。その際は①問題となっているポイント(論点)の確認 ②会社の主張とその根拠 を明確にしておく そして返事も必ず書面でもらうようにします。
調査官は書面の提出を嫌がりますが、出してもらえるまで言い続ける。それにより調査官が主張を取り下げるならば、目的は達せられたようなものです。

10.否認指摘にどうしても納得できない場合はどうすればいいですか?
→税務調査の結果、申告内容に何も誤りがなかった場合「申告是認」とされ、税務調査は終了します。新たな手続き等は必要ありません。
売上の漏れや、経費の否認等があった場合は追徴税が発生します。その場合は「修正申告を提出する」か「税務署に更正される」の2つのパターンがあります。
税務署の指摘を受け入れ、自ら誤りを正すのが「修正申告」で、調査官の指摘に会社が納得せず、税務署が誤りを正すのが「更正処分」です。
ちなみに修正申告も更正も追徴税額は同じで、「自首すると罪が軽くなる」といったことはありません。また、更正に対しては不服申立てが可能で、税務調査を担当した調査官とは違う調査官が実質審理(再審査)を行います。最初は認められなかったフェラーリの経費が認められたのは不服申し立ての結果です。

11.重加算税はどのような要件ですか?
→税務調査の結果発生する税金は3つあります。
①過少申告加算税
申告漏れなどで、本来納めるべき税額より申告した金額が少なかったときに課される税金で、税率は追徴税額の10%です。

②重加算税
財産を隠ぺいまたは事実を仮装した(意図的に脱税を企てた)ときに課されます。税率は追徴税額の35%となります。

③延滞税
法定期日までに納税をしなかった場合に課され、税率は過少申告加算税か重加算税かにより変わります。

調査官はいかに重加算税を課し、追加で税金を徴収したかで評価されるため、調査官にとっては昇給・昇格のためには重加算税をいかに課すか、がカギであり、相手が税務調査に慣れていないのをいいことに「まずは重加算税を課そう」とする調査官もいます。

12.事務運営指針をご存知ですか?
→重加算税について、国税庁は詳しくガイドライン(事務運営指針)を明示しています。
意図的に脱税を企てていないのであれば、否認された場合過少申告加算税となります。税務調査の際は、重加算税になるのかどうかを税務調査時に調査官と確認しておく必要があります。
修正申告後をして税務調査が終わったものの、そのあとに重加算税の通知が届いて驚くことになるケースはよくあります。
その際は取り消しを求めることができますが、手続きは煩雑なので、できる限り税務調査の際に合意を取り、脱税を企てていない旨をきちんと伝え、重加算税を回避したいところです。

3-5.いざとなれば「国税OB」に頼めば数千万円節税も

税務調査に関しては「税理士のセカンドオピニオン」を頼むのも効果があります。
実は税理士にはいろいろあり、税理士試験に合格して税理士になった人もいれば、23年以上税務署に勤務した元国税調査官も税理士になれるほか、弁護士や公認会計士も税理士資格を持ちます。
23年以上勤務し税理士になった人は「国税OB」と呼ばれています。

税務調査に関して、国税OBに頼むのは効果があります。現在は国税庁とOBの癒着といったことは認められていませんから、「先輩の国税OB税理士が後輩の調査官に『よろしく頼むよ』と便宜を図ってもらうようなこと」はできません。

国税OBが役に立つのは「このような場合はOKで、これだとダメ」をよく知っていることです。
国税OBは、元々調査官として「このような場合は経費として認め、このような場合は否認する」を決めてきた側です。国税庁の考え方、方針をよく理解しています。
「不服申立てのあった際、どうすれば勝てるか」
国税OBは、かつてそれを決めてきた側の人たちです。

日本は申告納税制度なので、納税者の言うことは基本的に正しい、違うと言う場合は言う側がその根拠を示す形になっています。調査官が「これは経費になりません」と否認するならば、経費でない根拠を示し、立証する責任は調査官側にあります。
国税OBは、シビアな立証責任を潜り抜けてきました。税務調査を受ける側になると「この程度の証拠で立証できていると思いますか? 不服申立てに勝てますか?」と調査官に迫ります。
手の内を知っている、ベテランの主張が、税務調査では非常に役立ちます。数千万円レベルの節税に成功することもあるのです。
税理士試験に合格した税理士は、税理士としてのスキルは試験をパスしていない国税OBよりも高くても、税務調査に関してはわからないことが多々あり、国税OBに頼むことがよくあります。
税務調査に関しのセカンドオピニオン、税務調査のみ国税OBに頼むというのは、非常に効果的な方法です。

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