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税制は「お金を持っている、取れるところから取る」理不尽なもののようにも感じられますが、実は一定の合理性のもとに整備されています。
「取れるところから取る」のも、「国際競争力を考えると法人税アップは難しい、国民感情を考えるとこれ以上の消費税増税も厳しい、だが税収を確保するためには、多く稼いでいる人の税金を多くすることだ。全員に一律の税率をかけることもできるが、低所得者層の反発や『金持ち優遇だ』という批判を受けるだろうからやめておく」という、それがよいかどうかは別として、合理的な理由からです。
日本政府は「お金をもっと流動させたい」と考えており、それをしてくれる人に対しては優遇、それをせず貯め込む人には厳しく接します。
本記事では触れませんが、相続税はその最たるものです。資産を貯め込むことには厳しく、相続税率も上げられています。
一方で、贈与税率は引き下げられ、目的によっては非課税の枠も増えています。資産を「貯め込む」には厳しい(相続税アップ)が、資産を「下の世代に回す」には優しい(贈与税率ダウン)という形です。
同様に政府の意図として「投資を促進したい」があります。今までのような経済成長は望めない以上、国力維持のためには投資が欠かせない。だがこれまでと同じことをしていては積極的な投資促進はかなわない。そのため、税制面で様々な優遇を行い、政府の意図に沿わないものには厳しくするのです。
政府の意図に沿わないものに厳しくするわかりやすい例が、「現金を持っていることがいかに損か」からわかります。
具体的に説明します。「円預金」と「円預金に限りなく近い公社債も含む)」の2つでは、後者を選んだほうがよく、「米ドル預金」と「米ドルMMF」でも、後者を選ぶほうがよくなっています。
どうよいのか、どれも利息に対して2割程度の源泉徴収がされますが、預金の場合、金利は利子所得なので源泉徴収=源泉分離課税として自動的に納税されて終わり、その後還付されることもありません。
ですが、投資信託の分配金であれば、株などの損失と合わせて源泉徴収された税金が戻ってくる可能性があります。
投資の活性化を目指す政府は、現金を投資商品に変えることに積極的で、様々な優遇を設けています。優遇される結果、預金であることは相対的にどんどんマイナスになっているのです。
投資といっても、種類はたくさんあります。不動産のように価格が高く、換金するのに時間がかかるものもあれば、少額から投資でき、現金化するのも簡単なものもあります。そのなかには、預金で持っているのとそう性質が変わらないものも存在します。
「投資は危ない。預金は安全」と考える人も多いですが、預金していても銀行が破たんしたら、最高で1000万円までしか補償してもらえません。このあと触れますが、外貨預金ならばその補償すらありません。
預金だからといって安全とは限らないうえ、安全性に関しては預金よりも高い投資先もあります。
「預金として持っているくらいなら投資に」の意識を持ちましょう。
預金と近い投資として、「公社債投資信託(こうしゃさいとうししんたく)」があります。公社債及び短期金融商品で運用し、株式を一切組み入れないことを信託約款上で明示しているファンドのことで、単位型と追加型があり、追加型公社債投資信託の主な商品としてはMRF、MMFなどがあります。
2016年1月の税制改正で、上場株式等の対象範囲が上場株式・公募株式投資信託等から特定公社債・公社債投資信託まで拡大されたのに伴い、公社債投資信託の収益分配金、譲渡・償還益も申告分離課税に一本化され、上場株式等との損益通算や特定口座での取り扱いが可能となりました。
円預金にしておくことは損が多いので、必要な分のみ銀行預金に残し、余った資金は自動的に投資に回せる証券会社のスイ―プサービスを活用するなど、仕組みにすることもできます。
なぜ公社債にすることにここまで価値があるのでしょうか? 預金のメリットが薄いこともありますが、2016年の税制改正により、公社債と株式の損益通算と繰越控除が可能になったことがあります。
「投資の活性化」を目指す政府の意図は、2016年の税制改正に大きく現れています。
具体的に説明すると、これまでは投資に関して「全体では損していても、小さな儲けが出ていた場合、その部分には税金が課せられた」のが、「ある投資では小さな儲けが出ていても、全体が損となったならば、税金は課されない」形に変わったということです。
たとえば、2016年の税制改正前は、ある株を売って損をしても、株の配当に対しては税金がかかるようなことがありましたが、改正後は「株を売って損しているから、配当には税金を課さない」というように変わりました。
ただし、変わったのはあくまでも「株式の譲渡所得」「先物取引に係る雑所得等」であり、不動産の売買など、まったく違う分野の投資と損益通算することはできません。同じカテゴリーと認められる部分のみです。
同じカテゴリーのみとはいえ、損益を通算することができるようになったのは、税制面でとても大きいことです。
また、3年間の繰越控除が可能になりました。同じカテゴリーの投資で、去年は損をしたが今年は儲けが出た、ただし去年とトータルで見るとまだ損のほうが多い。そのようなときに、これまでは「去年は損しても今年は儲かっているから今年は課税の対象」となっていたのが、2016年の税制改正から、「まだトータルで見ると損ですから税金は払わなくていいですよ」というように変わりました。
このように損失を繰り越して税金の控除対象となることを「繰越控除」と言います。
繰越控除を適用するためには、年間ベースでマイナスが確定したとき、翌年の3月15日までに税務署に確定申告する必要があります。
これをしておけば、そのあと3年は、利益が出ても損失の範囲内であれば税金は課税されません。
なお、投資はどの所得に分類されるかについても、注意を払う必要があります。先述のように同じカテゴリー同士で融通できるもの、できないものがあるほか、投資の利益によっては課税所得そのものを押し上げてしまい、税率を高くしてしまうケースもあるからです。
税金対策で投資を行っているのに、そもそもの税率を上げてしまってはすべてが無駄、本末転倒です。
やってはいけない所得分類の最たるものが「雑所得」です。雑所得で利益を得ると、その数字が課税所得を押し上げてしまいます。税率が上がったら損益通算などすべて吹っ飛びます。
節税に関して雑所得は何もいいところのない分類です。多くなれば税率を引き上げ、仮に雑所得がマイナスになったとしても、ほかの所得と損益通算をすることができない。翌年以降への損失の繰り越しも不可です。
たとえば、ソーシャルレンディング。これは「お金を借りたい人」と「お金を投資したい人」を、インターネットを通じて結びつけるサービスで、「個人が主役となる新しい金融マーケット」として、最近進んでいる分野です。
新しい取り組みであるため、まだ大きな投資の分野に入っておらず、ソーシャルレンディングの分配金・配当金は原則として「雑所得」分類です。
税率を上げてしまう投資は節税策としてはNGです。
日本円の国際的な信用度とは裏腹に、日本の財政がいかに危ういかが、連日報じられています。資産として持っているのは円だけというのも、非常に危険です。
ならば円ではなく、外貨で預金して持っておくことは可能性としてどうなのでしょうか。
『ホントは教えたくない資産運用のカラクリ』の著者、安間伸氏によると、外貨預金は税制上大変不利で「外貨預金は全力で回避すべき最も不利な商品」とまで言っています。
何がそこまで問題なのでしょうか? 安間氏は、2003年の時点で外貨預金が税制上不利で、税収を多くしたい政府が外貨預金を狙い撃ちすることは充分に考えられると言っていて、それが現実化していると言います。
外貨預金のデメリットは、利息そのものよりも為替の影響が大きいことです。仮に円安が進んだ結果外貨預金で儲けが出たとして、そのプラスは雑所得に入ります。
なまじ外貨預金を持っている結果、雑所得を増やしてしまったならば、税率を押し上げるだけです。
年によっては円高になり、元本に損失が生まれたとしても、雑所得はほかの投資の損益と通算することはできません。「この年は損したので翌年は得しても合算させて」という損失の繰り越しも、雑所得は認められていないからです。
「雑所得は儲けても税金を増やす、損しても一過性の損に終わる。何もよいところがない」
そのことを覚えておく必要があります。
外貨預金は、金利収入が利子所得として20%源泉分離課税され、取り返すことはできません。
また、為替損益は税制上の扱いが雑所得になり、税率が最高55%です。
損益通算は同年の雑所得のみで、損失の繰越はできません。「今年が得だったので、損した昨年と合算させて」は通用しません。そのほかの外貨建て金利商品、外貨MMFや外貨建て利付債券、外貨建て割引債や外貨(FX)証拠金取引などが損益通算や3年間の損失の繰り越しもできるのに比べ、非常に不利なのです。
さらに、外貨預金は普通の円預金と異なり、預金保険による1000万円までの補償がありません。両替手数料も米ドルで1円と、飛びぬけて高くなっています。これがドルMMFなら通常で高くても50銭程度、FXならば1銭未満も普通です。
「外貨預金は高金利」とよくいわれますが、利子など為替の変動であっけなく埋もれるレベルです。為替で儲かるかもしれませんが、儲けてもメリットが薄い、所得税の節税に関しては儲けても逆効果のこともあると、知っていただければと思います。