富裕層バイブル

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税金はもっと減らせる! 富裕層・高額所得者のための対策

8.それでも高額所得者になりたい? 知っておきたい日本の重税のカラクリ

節税に関する話をしてきましたが、そもそものところで、日本は富裕層に厳しい重税国家になっている、現実を知っておかなければなりません。
税制を知ることで、効果的な対策も打てるというものです。

8-1.年収1800万円以上は稼ぎ損!?

節税のためには、税制についても最低限の知識を持っておく必要があります。現在の日本では、課税所得が1800万円以上4000万円以下の場合、所得税率は40%で住民税が10%の合計50%、279万6000円が控除額となります。
4000万円以上なら所得税45%、住民税10%の55%、控除額479万6000円です。

全額給与で年収3000万円の会社員がいるとして、その人の支払う所得税額を計算してみましょう。
3000万円から給与所得控除220万円を引き、基礎控除279万6000円を引いた後に税率50%をかけると、支払う所得税と住民税の合計は、1250万2000円となります。

計算をわかりやすくするために、所得税、住民税だけで計算しましたが、約半分が税金になっています。課税所得が4000万円を超えると適用されるのは最高税率の55%です。
このほかに、社会保険料などの支払いもあります。収入が増えるほど、その金額も上がります。
稼ぐほど半分以上が税金です。

課税所得40%(住民税も合わせると50%)は、年収1800万円から適用されます。
「サラリーマンで年収1800万円以上は稼ぎ損。それ以上稼いでも取り上げるだけ、と国が言っているようなもの」
ジャーナリストの山田順氏は、著書『隠れ増税』(青春出版社)でそう語っています。

改めて見ても、富裕層・高額所得者にはとんでもない額の税が課されていることがよくわかります。

8-2.所得の2つの種類

税金に対するそもそもの考え方として、「所得」は何でできているかを考える必要があります。たとえば「年収3000万円」といったところで、全額を会社から給与でもらっているのか、自分が会社を経営しているのか、医師かなどにより異なってきます。

「フロー」で得られているのか「ストック」なのかも、考えておきたいところです。
フローとは、経済学の用語で毎年出入りするお金のことで、ストックとは、その結果として貯まったお金を指します。
飲食店や小売店などはフローのビジネスの典型です。
それらの店で飲食をする、買い物をする客がいることで売上が立つ形のため、比較的早い段階から売上を得られますが、特に契約関係等を結ぶわけではなく、その収入に継続性はありません。
「フローで収入を増やす」とは、物やサービスを売って利益を出し、その利益が大きくなることを意味しています。フロー収入は扱っている商品がヒットする、客数が増えるなどすればそれに伴って増加していき、売れなくなればすぐに減ります。
 
ストックとは、「蓄える」の意味で、顧客と契約を結んだり、会員を確保することで継続的な利益を得るスタイルを言います。
通信事業や電力・ガス事業、介護事業、塾事業などがストックビジネスに該当します。
不動産を運用したり、自分が経営する会社を上場させたりというように、自分の持つ資産が値上がりすることで資産の規模を大きくしていきます。

ストックはフローに比べて変動は小さいですが、やはり経済状況を反映するため、価値は常に持続するわけではありません。リーマンショックのような経済危機が起こると、価値が暴落してしまうこともあります。ただしそれはそのような重大な事態が起こったときで、基本的に一度まとまった資産が出来上がれば、なくなってしまったりすることはそう起こりません。

ストックビジネスの強みは、収益が安定しやすいことです。一定数の顧客、会員を確保できれば、毎月、毎年に決められた金額が支払われます。

8-3.日本の課税の仕組みをおさらい

日本の税制についておさらいをしておきましょう。どのような仕組みなのかをわかっていると、対策も打ちやすくなります。
税制というのは一定の合理性を持って整備されているため、「税金を取る側が何をしてほしいのか」を把握し、それに沿った対応をしていると、取る側があまり重視していない部分については、大きく譲歩してくれる可能性もあります。

日本の税制の特徴には以下のようなものがあります。
・「総合課税」と「分離課税」の組み合わせでできている
・総合課税は「すべて合計して課税する」形で、累進課税(稼ぐほど税率が上がる)
・分離課税は「一部だけ切り離して課税する」形で、所得に関係なく定率で課税

総合課税の代表的な例が、サラリーマンが会社からもらう給料、これは「給与所得」となります。
分離課税はさらに2種類に分かれます。ひとつは「源泉徴収」給与や報酬などの支払いに関わる税金(所得税)を支払者が差し引いて支払い、差し引いた税金を支払者が国に納付する「源泉分離課税」。
もうひとつは年に一度の確定申告で同じ種類の所得を合算し、まとめて税金を納める申告分離課税です。
源泉分離課税は「支払先による天引き」税額を計算してそれを引いたあとの金額を支払うことで終了します。総合課税と申告分離課税については、その年の所得を計算して、翌年の3月15日までに所轄の税務署に確定申告をし、納税する必要があります。
なお、源泉分離で天引きされた税金も、確定申告によりあとから取り戻す(還付)ことができる場合もあります。

総合課税にカテゴライズされる所得には、以下のようなものがあります。

給与所得、事業所得、不動産所得、一時所得、譲渡所得、雑所得など

そして、所得が上がるほど課される税率が高くなる累進税率が適用されます。

総合課税の税率を決める順序を説明する前に、使われている言葉の定義を説明します。「収入」「所得」といった言葉を何気なく使用していますが、税法上は明確に異なります。また、給与所得者か、個人事業主か、年金生活者かによっても変わってくるので、注意が必要です。

8-3-1.会社員の「収入」「必要経費」「所得」

・収入
給与や賞与などの年間の合計収入を指します。年末に会社から発行される源泉徴収票の「支払金額」欄に書かれている金額です。

・必要経費
会社員にとっての必要経費は、給与所得控除となります。正規雇用や非正規雇用、パートやアルバイトなどの就労形態に関係なく、所得税法上、年収に応じて決められています。
平成29年分の給与所得控除額は、給与所得の源泉徴収票の支払い金額が1000万円を超えるなら、220万円が上限です。

・所得
収入から給与所得控除を差し引いた後の金額(この場合は給与所得)を指します。
収入が1000万円ちょうどならば、給与所得控除額は220万円なので、給与所得は780万円となります。

8-3-2.自営業者の「収入」「必要経費」「所得」

・収入
自営業者の場合、一般的に年商などが収入にあたります。開業医であれば社会保険料収入や自由診療収入、飲食店経営者であればランチやディナーの売上などです。

・必要経費
 一律に金額が決められている会社員と異なり、必要経費は業種や業態によって変わってきます。必要経費とは「収入を得るために必要な経費」であるためです。
たとえば開業医の場合、診療所の家賃や駐車場代、看護師や事務員などの給与、医療設備の減価償却といったものが必要経費となります。
飲食店であれば、食材や飲料の仕入れ(正しくは売上原価)、厨房器具の減価償却、店内の装飾品やコック、ウエイターやウエイトレスへの給料なども必要経費です。
 また、「どこまで必要経費として認められるか」は一概に決められないことも多いため、その解釈をめぐり国税庁との間で争いがよく起こることについては、先述の通りです。

・所得
必要経費を収入から差し引き、残ったものが所得(この場合は事業所得)となります。

8-3-3.年金生活者の「収入」「必要経費」「所得」

・収入
民間の保険会社等で年金タイプの保険に加入していなければ、いわゆる「公的年金」の額面が収入金額にあたり、所得の区分としては「雑所得」になります。
 自営業者は国民年金、会社員は厚生年金、公務員は共済年金といったように、公的年金にはいくつか種類があります。公的年金等の源泉徴収票に記載されている「支払金額」を合計したものが、その年の収入金額です。

・必要経費
 年金生活者にとって必要経費にあたるものが「公的年金等控除額」で、年金受給者が65歳未満か65歳以上か、および公的年金等の収入金額に応じて決められています。
 公的年金等の収入金額の合計額が770万円以上の場合、控除額は155万5000円で、この場合は65歳未満でも65歳以上でも同額となります。

・所得
公的年金等の源泉徴収票に記載されている「支払金額」の合計額から、公的年金等控除額を差し引いたものが所得です。

言葉の定義を確認したうえで、総合課税の税率を決める3つのステップを説明します。
第1ステップが「収入から必要経費を引いて所得金額を決める」 
第2ステップが「所得金額から所得にかかる控除を引き、課税所得を決める」控除については別の項目で説明します。
第3ステップが「課税所得に税率をかける」これでほぼ支払う税金の額が決まります。なお、この先に住宅ローン控除など「税額控除」税額から控除されるものがあり、詳しくは最後の項目にてお伝えします。

この3つのステップを見てみると、所得にかかる額を少なくするならば、第1のステップと第2のステップで引くものを多くすることが重要とわかります。

8-4.日本の所得税は世界でいちばん高い

「年収1800万円以上は稼ぎ損」とお伝えしました。
所得が1800万円を超えると所得税率は40%、4000万円超えは45%となります。
これに住民税10%が加わるので、最高税率は55%です。

他国の税金事情についても見てみましょう。ヨーロッパは軒並み税率が高いですが、もっとも高くてスペインの52%、イギリス50%、ドイツ、フランス、オーストラリアが45%、アメリカ35%、カナダで29%となっています。

所得税が安いところとして、シンガポールは20%、香港は17%、ロシアは累進課税でなく一律で13%となっています。
最高税率は2007年には40%(課税所得1800万円)から、2015年には45%となりました(課税所得は4000万円超に変更)。

8-5.日本は税収不足。ますます課税は強化される。手を打たなければむしり取られる

どうしてこんなにも税金が高いのか? 日本は現在、とにかく税収不足です。アベノミクスにより、国際競争力を高めるために法人税を減税する流れが加速しています。
法人からの税収には期待できないとなると、消費税で国民全体から徴収する額を増やそうということになりますが、予定していた消費税の10%への増税は国民の強い反対により延期されました。

もう残されているのは、所得税と相続税くらいしかありません。この2つは、税金を徴収する側にしてみれば、非常に集めやすく、またその金額も大きくできます。
持っているところからたくさん取ればいいだけだからです。

日本を始め多くの国では、累進課税が適用されています。所得が多い人ほど税率が高くなる仕組みです。

会社員の給料は税金の多くが天引きです。税金は一括で納める形ですと、ものすごい額を納めている実感もわきやすいものですが、天引きですでに支払われた分が支給されると、あまり多くを支払っていると感じさせないような支払われ方がいろいろ行われています。

知らない間に納められているという状態を意図的につくり、その後その額を大きくしていく。そうしてどんどんむしり取っているのです。

日経新聞が発表した調査結果によると、年収が700万円以上の人の所得税負担額は年々大きくなっています。
所得税の税率改定が何度も行われ、高額所得者を中心に負担が増加する傾向となり、給与所得控除にも上限額が設けられました。

高額所得者は税率が上がり、控除も減った結果、年収2500万円を超える人たちの所得税負担額が、大幅に増えました。
1999年の921万円に対して、2017年は1225.1万円です(数字は予測)。約20年で、300万円以上税負担額は増していることになります。
むしりとられる額はどんどん増えているのです。

8-6.世の税金対策は稼いでいない人向けのものがほとんど

税金に関する情報は世にあふれていますが、富裕層・高額所得者にとっては、役に立たないものもたくさん、むしろほとんどが役に立ちません。
先ほどの日経新聞の記事では、所得税に関して「全体の4%が、税収の5割を負担する」としています。
そもそも高額所得者は納税者全体の4%に過ぎません。世に出回る多くの情報は、96%を相手にしているものゆえ、富裕層・高額所得者のためのものではありませんでした。

そもそもの収入が少ない人向けの情報なので、扱っている内容も、どうしてもスケールが小さくなります。
投資も節税策も、額が大きいからこそできる方法はたくさんあります。

なお、最近は「お金を払わず節税」が可能な方法はほとんどなくなりました。最近の主流は「少しお金を払うことで大きく節税できる」方法です。
そのような選択肢を取ることができるのは、ある程度まとまったお金を動かせる人たちだけです。

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